相続税って世界共通なの?
いいえ。
相続税は世界共通の税金ではありません。
国によっては相続しても税金がかからないという国も割と身近にあります。
たとえば、
カナダ
中国
香港
シンガポール
オーストラリア
タイ
マレーシア
といった国には相続税というものはありません。
ただ、知識としてそういうものなのかというぐらいであれば何も問題はありません。
ただ、
「相続税を払うことは万人共通の義務ではない」
という論理の元に国境を越えた脱税スキームが存在してきたことは事実です。
※相続税ではないですが贈与税では武富士事件(平成23年2月18日最高裁判所判決)という有名な判決がありました。『国境を越えた脱税スキーム』とされて争った一件です。最終的に国が負けて裁判は終わりました。詳しくは別の記事で扱いたいと思います。
「日本で生まれた日本人が日本で相続したら相続税の納税義務があります」
では、
子供が日本国籍ではない状態で相続したらどうなのでしょうか?
親子ともに外国に移住して外国籍を取得した場合はどうなのでしょうか?
そんな家族にも日本に財産があると相続税がかかるのでしょうか?
これがなかなかに厄介な話です。
そもそも移住といえば判断がしやすいですが、近年では世界中を行き来する日本人がたくさんいます。日本にも外国にも住所がある人たちです。
どの程度外国にいると移住になるのでしょうか?
年に1週間ぐらい日本に帰ってきている場合はどうなのでしょうか?
住民票を残したまま香港に移住して30年になるけれどどうなのでしょうか?
細かな点でいろいろな疑問が噴出してきます。
(実際その立場の人もいるでしょうから、ケースごとに別の記事で扱います。)
ただ、租税回避スキームとして考えているなら突き詰めない方が良いでしょう。
外国移住も含めて相続税逃れを考えて突き詰めてしまうと、
気がついた時には日本にはもう戻ってこられないということになりかねません。
相続税と住所の関係性
相続税における話をさらに複雑にしているのが住所の概念です。
所得税や法人税の場合、課税期間がだいたい1年と決まっています。
なので、1年の間に何日間、日本に住所があったかなかったかと、突き詰めれば国ごとにラインを引けないこともありません。そうやって各国と税金を分け合うわけです。
一方で相続税の場合はどうでしょうか?
そもそも相続税がない国と税金を分け合うことについて話し合いはできません。
課税に関しても死んだ時点での相続財産にかかるので、課税期間というものは存在しません、
では、日本で死んだ人すべてに相続税がかかるのでしょうか?
死んだ時点の日本にいるかいないかですべてを決めていいのでしょうか?
日本に旅行中の人は?
中国の富豪が2ヶ月日本中を観光している場合は?
2年出張で日本滞在のカナダ人は?
4年間留学中の人は?
また、疑問が噴出します。
旅行者、留学生等にまで事故死の際に相続税が多額にかかるとなると日本に来る外国人も激減してしまいそうです。(それでそれぞれの個別ケースについては別記事で扱いたいと思います。)
いろいろな疑問が噴出しましたが、
話を元に戻しますと、相続税は万国共通の税金ではありません。
いろいろな制度が国ごとにあります。
日本では巨大財閥が存続できないように相続税というのは作られました。
ただ、一長一短あるのだと思います。どれが良いと考えるのは、なかなかに難しいことです。