自宅の土地の評価額は安くなる??
「両親が持ち家を持っているんだけど、相続税ってかかるんでしょうか?」
こういう質問をときどき受けます。
やはり、
「相続税法が改正された」とか
「基礎控除額が下がって相続税の対象が拡がった」と聞くと、不安になるみたいです。
知識がないと当然でしょう。
しかも、そういう方にとって相続税というのは身近なものではなく、
「ただただ多額の税金を納めなければならない」
というイメージで怯えてしまいます。
特に都内に一戸建てを持っておられる両親がいるという場合など、まさにその不安のど真ん中です。
大富豪というわけではないし、そういう感覚で育てられてないけれど、
うちにもも相続税かかるの・・?自宅を売らなければならないのか?
こわくなる一方です。
しかも、そういう家庭には不安をあおるように、
「しばしば自宅を売ってアパートをたてませんか?」
という不動産屋からの営業の電話やチラシが入ったりします。
税金の恐怖のゆえに、手元に現金を置いておきたくなるというのは人間感情です。
『相続対策』という言葉もまことしやかに挿入されているので、
「売れるうちに相続税の納税資金が必要だから売っておいて現金を手元に置いておいた方が良いのかな?」
などと考えたりします。
そうした方の役に立つ情報があります。
「亡くなった人の持ち家については評価額が8割減になる可能性がある」
という租税特別措置法上の規定になります。
「小規模宅地等の特例」とされているものです。
なので、不安に駆られてあわてて不動産売却などしないでください。
現金になってしまうと、この特例は受けられません。
土地を持っている人にだけ適用される規定です。
この特例、「特定居住用宅地等」という名称でしばしば呼ばれるのですが、
どんな法律なのか解説できたらと思います。
どんな特例?
法律の趣旨としては簡単です。
「相続税のために住んでいた実家をを売らなければならない」
というかわいそうな事態を避けることができるように作られた法律です。
同居していたお父さんが亡くなったから
「相続税のために家を売るので、引っ越さないといけない」というのは実に悲しい話です。
家族の死というだけでも悲しいのに泣きっ面に蜂です。
「財閥の存続」を避けるための趣旨の相続税ですが、
こうなると趣旨と関係ない税金です。
ただ、そうはいっても亡くなった人の持ち家全てがこの規定が適用されるかというとそうでもありません。
- 「実家」が東京ドーム1個分の敷地があるという巨大な実家の人まで完全に保護すべきかというと、そうでもない気がしてきます。
「住むための家」を保護するためにそこまで巨大な敷地が必要なさそうです。 - また、親が亡くなったから実家を早々に処分して売却したという人はどうでしょうか?
そういう人も保護する必要はありません。
もはや売却していますから、「住むための家」を保護する必要はなさそうです。 - 他にも、親の実家以外に別に持ち家があってそっちにすでに住んでいるという人の場合はどうでしょうか?
そういう人も「住むための家」を保護する必要がありません。 - また、亡くなった親と同居していた親族がいたのに、その人を追い出して実家を相続した人の場合はどうでしょうか?
「住むための家」を保護すべき人がすでに家を追い出されてしまっています。
それで、こういうケースでは財産の評価減の適用はありません。
こういう趣旨のもとに、「特定居住用宅地等」に該当するかどうかについてはいくつかの要件が設けられています。
自分の家が「特定居住用宅地等」に該当するか判定したいという場合にはこちらのページからどうぞ
どうしたらいいの?
では、この特例を受けるためにはどうしたらいいでしょうか?
二つポイントがあります。
一つ目は
「相続人同士でもめないこと」
です。
上記に簡単に説明したように、この特例は亡くなった人の持ち家が誰にものになったかということが関係してきます。
相続人同士で揉めてしまうと「誰のものになったか決まっていない」という状態になるため、この特例が適用できるかどうか判定できません。
それで、適用できないことになります。
1億円の敷地が特例が適用できれば2000万円になるのに、揉めたがために1億円のままの評価になるわけです。
8000万円も損します。
仮に税率10%で計算しても、
800万円も税額が上がってしまうわけです。
とにかく相続人同士で揉めないようにしましょう。
二つ目のポイントが
「相続税の確定申告をきちんとする」
ことです。
通常、相続財産の合計額が3000万円であれば、相続税はかからないので相続税の申告は不要です。
でも、この特例を使うときにはじめて相続財産の合計額が3000万円になるという場合には、相続税はかからないのですが、相続税の申告はしなければなりません。
税理士に頼める方は頼んでしまった方が良いかと思います。税金計算が関係していて、間違うと罰金的なペナルティがあるので。
ただ、申告書の記載方法については、別途扱いたいと思います。
最後に、この特例には、「いついつまで相続した土地家屋を所有している」というような要件があります。
それで、早々に実家の土地を売ってしまったりすると特例の適用はできません。
売る時期については、税理士に相談したり、要件をよく確認したりして判断しましょう。
まとめ
亡くなった親の持ち家の相続の時には、相続税評価額を安くする特例があります。
きちんと特例の恩恵を受けられるように、もめないようにした上で確定申告しましょう。