意外と忘れてしまいやすい「相続時精算課税贈与」

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意外と忘れてしまいやすい「相続時精算課税贈与」

相続税の申告に際して
「以前に贈与はありましたか?」
という質問を税理士からされることがあると思います。

税理士であれば必ず質問します。相続財産でなくても「亡くなる前3年以内の贈与」については相続税の対象だからです。
申告漏れとなっては責任問題です。
それで、そうした説明を受けて3年間ぐらいの贈与があったかどうか思い出すわけですが、3年間ぐらいですと記憶というものは割としっかりしています。

しかし、「相続時精算課税による贈与」という場合はどうでしょうか?

直近3年間の話ではありません。10年以上前の話になることもあります。

平成15年からこの制度がスタートしました。
すでに10年以上の年月が経過しています。

こうなると相続人の方の中にも記憶の中から
「相続時生産課税の贈与をした」ということをすっかり忘れてしまうという方がちらほら出てきています。

おそらく、この先10年、20年、30年前の記憶という話になると、こういう方が増えてくると思われます。

なぜ、こうしたことになるのでしょうか?
忘れてしまうとどんなペナルティがあるのでしょうか?
どうしたらいいでしょうか?

《割と簡単な相続時精算課税による贈与税申告》

こうしたことが割と起きてしまう要因の一つは
「相続時精算課税による贈与税の申告は意外と簡単に自分でもできてしまう」というところです。

相続時精算課税による贈与税申告というのはそれほど難しいものではありません。

特に現金を贈与している場合はかなり簡単です。
贈与税申告、相続税申告で気を使うのは財産評価の部分だからです。

現金贈与の時には
「この財産がいくらなのか?」
ということに迷いはありません。

現金500万円もらったら500万円です。

それで、2/1-3/15の確定申告の時期に税務署の無料相談に行っても確定申告書を教わって完成させることは比較的かんたんです。

一方で、同時期に
「500万円の贈与」
でも
「『相続時精算課税』という制度を選択すれば110万円を超えているけれども2500万円までは贈与税がかかりませんよ」
という説明をどこかで見て、
「じゃあ、そうしよう」
と考える方もいます。

悪いことではありません。むしろ良いことです。自分で申告することができるのが一番です。
戸籍謄本等を一緒に出さないといけないので、面倒ではあるのですが、申告書や届出書自体は税理士に頼まないといけないほど難しいものではありません。

実際、この制度を自分で選んで自分で申告される方は多いようです。

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ただ、おそろしいのはこの申告について何十年か後に
「簡単すぎて申告したこと自体を忘れてしまう」
ということです。

10年単位の歳月というのはおそろしいものです。

《忘れてしまった場合のペナルティ》

贈与を受けていたことについて相続税の申告の時点ですっかり忘れてしまった場合にはどうなるのでしょうか?

相続税申告で過小に申告したということになるので、悪気はなくても過少申告加算税が課されることになります。
相続時精算課税の贈与の場合、結構な額の贈与をしていることが多いです。
それで申告漏れの相続税額と過少申告加算税についての負担は何百万円という結構大きな額になることがあります。
最初の申告は簡単なのに「忘れた」だけで何百万円も払えと言われるというのは、恐ろしいことです。

人間というのは「忘れる生き物」なのに、制度上はそうなっています。

《相続税申告の時に確認できないのか》

もちろん確認することはできます。

税務署に申請をすれば自分の過去の申告書を閲覧することは可能です。

それで相続税申告の際に税理士に、過去の贈与について聞かれたら
「ちょっと覚えてませんね」
とか
「税務署に何か出したような記憶があるのですが、控えはもうないですね」

という場合には、閲覧サービスを利用して税務署に過去の申告書を見せてもらいましょう。

ただ、贈与があったことをすっかり忘れた上に
「そういう贈与は一切ありませんでした」
と言い切ってしまうと、やはり問題があります。
税理士は基本的に納税者の言葉を疑うような職業ではないからです。

制度が始まって10年が経過しました。
「自分で申告したけれども10年、20年前の贈与をすっかり忘れてしまって『贈与などなかった』と言い切る人」もこれから増えてくると思われます。

納税者も税理士の側も、「人間忘れるものだ」という特性を踏まえて気をつけなければいけないところですね。

《まとめ》

平成15年にスタートした相続時精算課税制度ですが、制度スタートから10年以上が経過し、自分で申告した人もすっかり忘れているということがあり得ます。
10年も経過していますと下手すると申告を依頼した税理士の先生ですら忘れているという人もいるかもしれません。(税理士が忘れてはいけないですね。そういう仕事ですから。)

時の経過には人間勝てません。

相続税申告の際には念のため過去の申告について「絶対ない」というのではなく、一応税務署に自分で確認するか、税理士の先生に確認してもらって正しい申告書を作成するように心がけましょう。

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